先週の経済学部ネタに引き続いて、経済学は儲かるのかについて。
今回は小ネタですね。
経済学と言えば、人間の生活に必要な物を生産・分配・消費する行為について探求する学問です。
その経済学を活用した仕事は様々ですが、中でも証券や債券など金融の専門職であるトレーダーやファンドマネージャーなどは
高額の収入を得ているというイメージを抱いている人も少なくないのではないかと思います。
実際、平成26年分(2014年分)の日本の平均年収は415万円(国税庁:民間給与実態統計調査)であるのに対し、
証券業界の平均年収は毎年650万~700万円ほどで推移しており、中には20代で年収1000万円を超える人もいるそうです。
また、外資系企業などではパフォーマンスに対するインセンティブが貰えるケースがあり、
世界最大級の投資銀行であるゴールドマン・サックス(GS)では、2014年の社員の平均年収が4000万円というデータもあります。
(GSは一般社員でも年収1億越えの方もいらっしゃるそうで、CEOの年収はおよそ10億円~60億円で推移しているとのこと)
さて、ここまで読むと、「経済学って儲かる学問なのかも」とお思いの方もいらっしゃるのではないかと思います。
ただ、もし本当に儲かる学問であれば
経済学者は全員金持ちである
と言えるのではないでしょうか。
もちろん、経済学者が全員お金儲けをしているわけではないと思いますし、
これが成立しないからと言って、それがイコール、経済学が儲からない学問となりませんね。
ですので、ちょっと観点を変えた話をさせて頂きたいと思います。
皆さんは、ロングターム・キャピタル・マネジメント(Long Term Capital Management)をご存知でしょうか。
ロングターム・キャピタル・マネジメントは、アメリカに本部を置いたヘッジファンド(機関投資家や富裕層の資金を集めて投資を行う組織)で、
運用チームにFRB(アメリカの中央銀行)の元副議長や、後にノーベル経済学賞を受賞するマイロン・ショールズ、ロバート・マートンが参加していました。
その運用方法は「ブラック・ショールズ・モデル」を用いたもので、
マイロン・ショールズ、ロバート・マートンの2名は、この理論で1997年にノーベル経済学賞を受賞しています。
そんなドリームチームで構成されたロングターム・キャピタル・マネジメントですが、
マイロン・ショールズ、ロバート・マートンの2名がノーベル経済学賞を受賞した翌年の1998年に、空前の損失を出して倒産してしまいました。
ノーベル経済学賞を受賞した翌年に、ノーベル経済学賞を受賞した理論で運用したファンドが倒産してしまったということですね。
これはつまり「ブラック・ショールズ・モデル」が間違っているということなのでしょうか。
「ブラック・ショールズ・モデル」は現在の金融経済学において非常に重要な理論であり、数学的に正しいことは証明されています。
ただそれを運用するにあたって、リスク理論の穴が生じる場合が多いので、実際の取引で儲かるのかと言われると必ずしもYESではないです。
経済学の世界では、経済学の理論は基本的に正しいです。
だからと言って、実際の世界の経済活動に当てはめたときに成功するというわけではありません。
単純な数式で定義できるほど、実際の経済は単純ではないということですね。
さて、ここまで踏まえて「経済学は儲かるのか?」というテーマの結論ですが、
「経済学は儲かる要因となる学問であるが、それだけで儲かるとは限らない」
という結論になるのではないでしょうか。
次回もまた、よろしくお願いします。