経済学部は文系?理系?

以前のある記事で「経済学部を文系」として扱ったことがあります。
筆者自身は学問を文系・理系という括りで分けることに抵抗があり、
今回は経済学部は文系として扱うべきか、それとも理系なのかについて、触れてみたいと思います。

もし、以下の記事を読まれていない方は合わせて目を通して見てください。

ノーベル賞受賞者と学歴
http://noble-learning.com/blog/university/nobel-university/

 

arts-science

 

さて、一般的に経済学部と聞くと「文系」「理系」のどちらをイメージするでしょうか。

 

おそらく多くの方は文系をイメージするかと思います。
実際多くの塾・予備校は文系コースの想定に経済学部を入れていますし、入試科目に数学や理科が必須でないため文系認識の人が多いと思います。

しかし各大学の経済学部の入試科目に着目すると、
京都大学や九州大学の経済学部の入試には理系用の枠が用意されており、
文系総合大学とされる一橋大学でも後期日程の経済学部は数学Ⅲ(理系範囲の数学)まで要求されます。
(ちなみに一橋大学経済学部後期の数学は、文系受験生の配慮して数ⅠAⅡBまでの知識で解ける問題を用意してあります)

また入学後のカリキュラムや制度に着目してみると、
慶應義塾大学経済学部は1・2年生の必修科目に理系数学の授業があり、この単位を取れないと3年生に進級することができません。
進振りのある東京大学では、経済学部の指定科類として文Ⅱが有名ですが、実は理科類からも一定数の人数枠を設けています。

 

入試情報やカリキュラム・制度から考えると、文系出身者が多い学部であることは間違いないのだが、
一定数の理系を受け入れる体制を他の文系学部より設けている大学が多く、それだけ理系要素が必要な学部なのだと思います。

 

次に、視点をかえて「経済学」という学問的視点から文系か理系か考えたいと思います。

経済学で扱う科目や分野は幅広く、学問上は社会科学という分野に属しています。
日本では東京大学で初めて経済学(理財学)が設置されたときは文学部の科目として扱われていました。
また、経済学の中でも経済史(経済学の歴史)を例に挙げれば文系であると言えるかもしれません。

ただ、代表的科目であるマクロ経済やミクロ経済、ファイナンス分野や計量経済など、程度は違えど数式を扱う科目の方が圧倒的に多いです。
近年では理論物理学や電気工学、情報工学などの分野を応用した数量経済学なども発展しており、かなり数学色の強い学問であると思います。

ちなみにノーベル経済学賞受賞者には、非経済学者の受賞者も存在し、その中には数学者が多いです。
大学で経済を学べば必ず耳にすることになる、ナッシュ均衡のジョン・ナッシュ(数学者)が有名ですね。
また経済学者として受賞しても、元々は数学者だったり、物理学者だったりという方もいらっしゃいます。

ここまで見ると、本当に文系として扱ってよいのかちょっと怪しくなりませんか。

 

最後に、工学分野の関連性について考慮したいと思います。

理学部・工学部の違いについては、以前記事で紹介しているので、未読の方は以下を参照してください。
http://noble-learning.com/blog/university/science-difference/‎

工学部の中には経済工学という分野があり、これは経済的な諸問題について数量的・計量的な分析から解決する学問です。
経済学部で扱うこともありますが、基本的には工学部に設置されている場合が多いです。

またそれに関連した学問で、経営工学や金融工学と呼ばれる学問もあります。
これらも経営学や金融学を基盤としていますが、理系的アプローチを前提とした学問のため、理系学部に設置されています。

このように、経済学部の科目の中でも得意に数学色の強いものは理系学部に科目が設置されているケースが多く、
そういう視点から考えると、理系要素を排除された経済学が経済学部という解釈も可能であるため、経済学部は文系とも考えられますし、
それらを含めて総合的に考えると、経済学は理系要素を多分に含んでいるため、理系の学部という解釈をすることもできるのではないかと思います。

 

いかがでしょうか。
ここまで読んでいただいて、経済学部は文系と認識しているでしょうか?それとも理系と認識しているのでしょうか?

個人的には、世の中の文系というイメージを漫然と受け入れることができず、
かといって理系というイメージに振り切れない微妙な立ち位置であるという解釈ですね。
そもそも文系とか理系とかいう分け方自体が好きではないんですけどね。

 

ここで東京大学経済学部教授の伊藤元重さんの言葉を拝借させて頂きたいと思います。

“東大も含めて、日本の大学の多くは文系と理系に分かれています。数理的な思考が得意な人は理系に、そうでない人は文系に、というような慣行がなんとなく定着しているようです。高校で進学先を決めるときでも、そうした基準で進学先を決めている人が多いようです。しかし、こうした分類は不幸なことだと思います。他の文系の学部のことは知りませんが、経済学部の場合は、数理系の学問が得意な人が実力を発揮する分野もたくさんあるからです。実業界に出ても、学問を続けても、数理的能力を発揮することで活躍することができる分野がたくさんあります。もちろん、経済学は間口の広い学問ですので、数理的能力に自信がない人で、自分にあった学び方ができることは言うまでもありません。”
(「経済を学ぶとは」伊藤元重より引用:http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/agc/news/53/ito.html)

 

仮に文系として経済学部を認識しても、だからと言って数学が不要であるということにはなりませんし、
逆に理系として経済学部を認識しても、だからと言って数学が必須であるということにはなりません。

自分に合った学び方ができる学問をみつけ、それを学んでいくことに意義があると私は思います。
そういう意味で経済学部は本当に間口の広い学問だと思いますので、自分なりのアプローチを探して学んでいただきたいと思います。

 

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では、また次回。